田中公一さん(写真右から2人目)は、運送業をやっていましたが、奥さんの絹子さんと結婚するときから、将来は「魚屋を」と、思っていました。それが実現したのは、1975年2月、食料品店を経営していた絹子さんのお母さんが病気になり、店を継ぐことになった時からです。
しかし、魚屋として働いたこともなく、毎日市場に仕入れに行ったときに市場の人や来ている魚屋さんに聴いたり、お母さんの時からのお得意さんで行商の魚屋をしていた人が毎日来て、教えてくれたりと、連日、試行錯誤の中でいろいろ身につけていきました。そのころは、毎朝4時に起き、市場に行って、夜は10時まで店を開けてがんばりました。「冬の雪はきつかったが、他のことをつらいと思ったことはない。好きなことを楽しいと思ってやっていたら、つらいことも楽しくなる」と、言う公一さんです。今でも、公一さんは魚市場での組合関係以外、休まず、1月1日も、取引先の料理屋、老人施設、病院などへの配達があるのでお店にでます。
ご夫婦と従業員3人で、切り盛りしていますが、帳簿担当の従業員が心配するほど、もうけを考えず、お客さんを一番に考えた商売をしています。「絶対にお客さんを裏切らない、正直な商売」をモットーに相手のことを考え、毎日を大切にした商売をこの28年間やってきました。このことが周りに広がり、得意先が増えてきました。それもこちらから営業したわけでなく、全部、相手から言ってきたものです。
先日、同じ歳の絹子さんと一緒に、家族から還暦のお祝いをしてもらいました。将来的には他店で修行中の次男・公太さんが店を継ぐことになっていますが、まだまだ第一線でがんばる公一さんと絹子さんです。