伝統守る提灯絵師
平田俊興さん(八女民商)
300年の歴史を持つ八女提灯は、優雅さと気品あふれる姿で名高く、経産省として初の国の伝統工芸品に指定され、生産量も全国一です。
その大きな特徴の一つは、手描きによる絵付けを守り続けていることにあります。現在では手描きの提灯絵師がいるのは八女だけで、わずか20人の絵師の一人が平田俊興さんです。平田さんの仕事場は、自宅の六畳間です。「全国のみなさんに自分たちのつくった伝統の提灯を飾ってもらえる。私はこの仕事が楽しい」という平田さんは、絹を貼った火袋に、見事な筆さばきで、時には2本の筆を同時に使って、下書きもなしに山水、草木、花鳥などをすばやく描き上げていきます。
平田さんは印刷関係の会社を辞めて絵師として独立して20年ですが、はじめの3年は仕事が少なく苦労されました。 今は奥さんと息子さんの3人で絵付けの仕事をこなしていますが、繁忙期の5月から7月は、さすがの平田さんにとっても地獄です。朝3時に起床し、3人で夜までがんばっても50個つくるのが精一杯。 平田さんは百回描いても寸分違わぬ絵付けができるほどの腕前ですが、熟練の技でも絵付けの工賃は提灯の小売価格の100分の1程度。「せめてあと100円あがったら」という平田さんの願いは切実です。
また「平和だからこそ自分たちは提灯の絵付けができる」と、平田さんは平和と伝統産業を守る信念を強く持ち、地域活動にも熱心です。2年前から公民館長を引き受け、平田さんの発案で9月下旬の1週間、小学生達に平和の尊さを語りかけ、提灯の絵付けを教える「通学合宿」を行うようになりました。
大変忙しい身でありながら八女民商の理事としても活動し、「民商に入っていろんな人と知り合い、商売にさらに誇りが持てた」といわれます。
八女郡広川町大字新代1689−1
電話0943(32)3417