鬼塚隆治さんが事務用品店を開業したのは76年(昭和51)4月ですが、86年6月に現在の鉄骨3階建ての立派な店を新築。昨年7月1日有限会社に変更しました。
鬼塚さんの店舗は、筑後市をつらぬく国道209号線沿いにあります。国道筋のため一般客の流れが少ないこともあって、顧客は会社や官庁関係がほとんどです。現在100軒ほどの取引があります。
官庁関係は随意契約と入札などで事務用品を納めています。取引の顧客を増やすために、当初は飛び込み訪問など粘りづよくがんばり、頭は低く愛嬌と元気良さという持ち前を発揮して現在までを築いてきました。昨年も一つ新たな取引先を開拓、ここには2カ月かよいました。
しかし長引く不況に加え、通信販売の急増するなか、そのあおりで売上げは最高時から4割ほど減りました。
通販だけでなく100円ショップの進出はさらに打撃となっているといいます。「昔は地域の人とのかかわりでは人情味もあり買ってくれていたが、いまはそれが薄れて安い方へ買いにいく人が多い」と鬼塚さんは語ります。
いま店の経営には鬼塚さんと奥さんの輝代さん、それに娘さんとお婿さんの4人でがんばっています。息子(婿)さんはコンピュータを扱うことから、コンピュータも販売しています。
鬼塚さんの持ち前の粘りづよさは、商売以外でも発揮されました。今年5月に高裁までたたかった消費税仕入れ税額否認裁判では不当判決を受け、くやしい思いを残して上告を断念しました。
しかしこの粘りづよいたたかいの中で鬼塚さんは鍛えられ、長いたたかいの中で半年も入院する交通事故にもあいましたが、2年の長きにわたってのリハビリの努力でほぼ現状復帰まで立ち直りました。鬼塚さんは途中くじけそうになったこともありますが「この裁判のたたかいの経験がなかったらここまで復帰できたかどうか」と振り返ります。
「主人は生まれつきの商売人、もう少し早く生まれて戦後からやっていたらもうかっていたかも」と輝代さんは評価します。
鬼塚さんは、売上げが下がってもつぶされてたまるかの気持ちで、ひらめいたことを標語にして自分に『しった激励』をしています。「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない」「本気ですれば何事もおもしろい」、鬼塚標語の一例ですが、商売への気概があらわれています。